夏休みの記憶

子どもらと同じ時期、ワシは何をしていたか、記憶の海へダイブ(夏だし)。

三歳

あまり覚えていない。母親がガランとした部屋で掃除機を掛けていた。たぶん引越しをした先での一場面,それが人生最初の記憶,たぶん。赤白のボンネットバス,給水塔,雨つぶの波紋,ヨーグルトの広口な瓶,眠ってたらに一人になって泣きながら眺めた窓の冷たさ,幼稚園で国旗を憶えたオトナが喜んでたけどナゾ,自転車に乗れた,コケて膝すりむいた,兄貴がこっそり匿っていたノラ犬,盲腸の姉,ガラスに手を突っ込んだ姉(17針),この世に存在しない動物のぬいぐるみは多分母のお手製,もぞもぞ手の中を進むオケラ,モグラの死体,お父さんの仕事でカナダに引っ越す子がセサミストリートを見ていた,ワーゲンビートルに乗せてもらった,泥団子。季節は覚えていない。

小六

貯めていた小遣いでキットのラジコンカーを買った。8時間充電して十五分遊べる。世の中に私立の中学があることを知る。9時になったらSFのラジオドラマ聴いて寝る暮らし。外で大便が出来なかった。少年の船,って旅行会社のツアーでまっちゃんとサンフラワーで宮崎に行った,リーダーはマッチ(カーリーヘアーで痩せててマッチ棒みたいだかららしい),たぶん大学生のアルバイト。イルカがフェリーに並走する,ジャンプしながら。手乗り文鳥のチッチは野良猫に脅かされて逃げて帰らなかった,雑種のタローを貰って抱えて帰ってきた。

中一

夏休みの半分は吹奏楽部の練習。なぜか筋トレ声だし校庭三十周とか。午後はプール。コンテストもこの時期、参加賞相当の銅賞、ダサい。

中三

部活は続けている。この間に顧問が替わり、だいぶ練習が音楽らしくなる。午後は音楽室のステレオで誰かが持って来たテープとかかける。高中とかスペクトラムとかにヤラレタ。コンテストは創立初の金賞ローカル。へぇ府代表なんて決めるコンテストだったんだ。全国とか眼中にない。みんな受験勉強を始めるらしいが、ナゾ。だって学校で勉強することで試験するんでしょ?みたいな。